大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(ラ)241号 決定

競売法にもとづく競売手続において、同法第二七条第三項所定の利害関係人は、法定の事由があり、しかも競落許可決定によつて損失を被るべき場合には、その決定に対して抗告することができるのである(競売法第三二条第二項、民事訴訟法第六八〇条、第六八一条第二項、第六七二条)。そして、競売法第二七条第三項第四号にいう「不動産上の権利者」とは、競売不動産に対する物権を有するものにかぎらず第三者に対抗できる賃借権を有する者をも含む趣旨と解するのが相当である。本件において、被告人らのいうところは、抗告人藤井は債務者兼競売不動産の所有者であり、被告人会社は競売不動産につき第三者に対抗できる賃借権を有する者であるというのであるから、競落許可決定によつて格別の損失を被むる場合には、抗告人らは、これに対して抗告を提起することができるわけである。

ところで、抵当権実行による競売においては、債務者である物件所有者は、競落許可決定によつてその所有権を失うに至ることをかねて覚悟しているはずであるから、抵当不動産の所有権喪失による損害なるものは、競落許可決定によつて特に右債務者兼所有者に生じたものということはできない。また競売不動産について賃借権者があるのにそれがないものとして競売手続が進められたというようなことも、これによつて特に右の債務者兼所有者に損害を与えるものとは思われない。その他本件競落許可決定によつて抗告人藤井が損失を被むるべき事情は何も認められないのであるから、抗告人藤井は右決定に対して抗告を申立てることができないのである。

つぎに、抗告人会社のいうところは、抗告人会社は競売不動産につき、第三者に対抗できる賃借権を有するというのである。果してそうであるとすると、たとい、競売不動産に賃貸借がないものとして競売手続が進められたとしても、右賃借権は、これをもつて競落人に対抗することができるはずであるから、やはり、競落許可決定によつて抗告人会社が損失を被むるものとはいえない。その他抗告人会社が、右決定によつて、特に損失を被むるべき事情は認められないから、抗告人会社も右決定に対して抗告を申立てることができないのである。抗告人らの抗告は理由がなく、棄却を免かれない。

(新村 中田 吉田)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!